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消費税おける税務調査とは?~還付申告法人が特に気をつけたいこと~
法人の申告をしていると、「税務調査」という言葉に敏感になってしまう方も多いかもしれません。特に、消費税の「還付申告」を行ったことがある法人の方にとっては、調査の対象となる可能性が高いと聞けば、少し身構えてしまうものです。
本記事では、消費税の税務調査の基本的な構造から、還付申告法人が注意すべき点、調査の傾向、対応のコツまで、やさしく丁寧に解説します。
消費税の税務調査の特徴とは?
法人税とセットで行われるケースが多い
消費税の調査は、通常単独では行われず、法人税や所得税などとの「同時調査」の形で実施されることが一般的です。これは、消費税の課税売上や仕入は、法人税計算の基礎資料と密接に関わっているためです。
法人税調査で売上や仕入に関する修正が入った場合には、それに連動して消費税の修正が必要になるケースがほとんどです。これを「連動非違」と呼びます。一方で、簡易課税制度の誤った適用や非課税取引の誤処理といった「消費税独自の誤り」もあり、こうしたものは「固有非違」として指摘されることもあります。
消費税専門官ではなく一般調査官が担当
消費税の調査は、法人税や所得税の調査官が兼務して行うことが多く、必ずしも消費税専門の知識を持つ調査官が担当するとは限りません。そのため、納税者側で取引の経緯や課税区分を丁寧に説明できるようにしておくことが重要です。
消費税還付申告は厳格にチェックされる
国税庁の方針と調査の強化
国税庁は、「不正還付の未然防止」を重点方針としており、消費税の還付申告については、机上での審査だけでなく、電話による確認や資料請求、さらには実地調査まで行うことがあるとしています。特に、輸出取引を通じた還付申告に対しては、税関との情報交換を活用するなど、連携を強化しています。
実際に、過去には以下のような不正事例が告発されています。
- 架空仕入れと架空輸出を組み合わせ、腕時計販売を装って多額の還付を受けようとした。
- 存在しない太陽光設備を購入したように見せかけ、仕入税額控除を過大に計上した。
- 架空の取引を捏造し、輸出販売を装って還付を試みた。
こうした事例を背景に、調査体制は年々強化されており、特に大口の還付申告(目安として100万円以上)を行う法人は、調査対象となる可能性が高いとされています。
「還付=自動的に戻る」わけではない
還付申告は、提出しただけで自動的にお金が戻ってくるものではありません。机上審査が行われ、必要に応じて追加資料の提出や聴取対応が求められます。審査から実際に還付金が振り込まれるまで、3か月以上かかることも珍しくありません。
こうした背景には、還付申告の中に不正なものが紛れていないかを慎重に見極める必要があるからです。
消費税還付法人が気をつけたい対応ポイント
還付申告に至った理由を明確に説明できるようにする
調査をスムーズに終えるためには、「なぜ今回還付となったのか」を資料でわかりやすく説明することが重要です。特に、前期までは納付だった法人が突然還付になった場合には、調査の可能性が高くなります。
たとえば、
- 設備投資を行ったために仕入税額が増加した
- 輸出取引が急増した
- 売上が減少した
などの要因を、契約書・請求書・振込記録・輸出証明などの資料を添えて説明できる準備をしておきましょう。
通年還付法人に対するチェックも厳しい
「輸出型企業だから毎年還付になっている」という法人も油断は禁物です。実際には、毎年同じような理由で還付が発生していたとしても、その取引実態がきちんとあるのかを確認されます。
特に、過去には輸出免税を悪用した不正還付が多数摘発されてきた経緯もあり、国税当局としては「慣例的な還付法人」もチェック対象として見ています。
消費税還付を受ける上での注意点とまとめ
消費税の特殊性と還付金額の大きさ
消費税は、その構造上「納税額=受け取った消費税−支払った消費税」で計算されるため、大きな設備投資や輸出取引があれば、納税額がマイナス、すなわち還付対象となることは自然な流れです。
しかしながら、年間の還付総額は5.8兆円以上にものぼり、消費税収のうち27%以上が還付されています。これほどの還付規模がある以上、不正を試みる者が現れるのも事実です。そのため、国税当局としては「還付申告=要注意対象」と位置づけ、重点的な審査・調査を行っています。
調査対応における心構え
消費税の調査では、法人税の調査と重なる部分も多く、併せて対応することになりますが、還付に関しては特に個別の書類や取引証明が求められる場面が多くなります。
還付申告を行う場合には、
- 調査が入る可能性を前提とする
- 取引の正当性を証明できる書類を準備する
- 変化があった場合(例:初めての還付など)にはその理由を明示できるようにする
といった備えが、調査対応のスムーズさを大きく左右します。
さいごに
消費税の還付申告は、企業にとって正当な権利である一方、不正行為があることで審査や調査は年々厳しくなっています。還付を受けるには、制度を正しく理解し、正確な資料の準備と、説明の整備が不可欠です。
不安がある場合や、調査に備えて整理しておきたいという方は、税理士などの専門家に相談し、しっかりと対策を講じておくことをおすすめします。
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