一般社団法人において課税対象とされる収益事業についてやさしく解説

こんにちは。水道橋のひとり税理士の竹岡悟郎です。今回は一般社団法人等において課税対象とされる収益事業について分かりやすくお伝えしたいと思います。

前回のコラムでは、一般社団法人等については税制上、3階建て(<1階>普通法人に該当する一般社団法人、<2階>非営利型一般社団法人、<3階>公益社団法人)で構成され、1階法人については全所得課税、2階法人については収益事業についてのみ課税、そして3階法人についても収益事業についてのみ課税されるが、公益目的事業に該当する事業は、収益事業に該当しないことをお伝えしました。

そもそも、その「収益事業」とは一体どんなものか。一般社団法人や公益法人など、法人税の課税対象となる「収益事業」という言葉を耳にする機会は少なくありません。特に非営利法人であっても、事業の内容によっては法人税がかかる場合があるため、その理解は重要です。この記事では、収益事業の基本的な考え方、対象となる事業の種類、そして課税対象となるか否かの判断ポイントについて、わかりやすく解説していきます。

目次

収益事業とは何か?

収益事業とは、法人税法上で定義された「継続して」「事業場を設けて」営まれる事業のうち、法人税法施行令第5条に掲げられた34の事業(及びそれに付随する行為)を指します。公益法人や一般社団法人など、非営利法人であっても、これらの収益事業を行えば、原則としてその所得には法人税が課税されます。

ここで注意したいのは、公益目的で行っている事業であっても、それが34の事業に該当すれば課税対象となることです。逆に、公益法人については34事業に該当しても、公益目的事業に該当する事業は、たとえその34業種に該当しても収益事業には該当しないとされ課税されないという点も押さえておく必要があります。

また、「事業場を設けて」「継続して」行うという形式要件も重要です。一時的な活動や常設の施設を持たない活動であれば、収益事業とされない可能性もあります。


収益事業とされる条件

継続性のある事業

「継続して」とは、1年を通じて常時行われる事業だけでなく、全体として継続的とみなされる活動も含みます。たとえば、毎年決まった時期に実施する海水浴場における席貸し、縁日での物品販売、バザーなども、その準備や実施が恒常的であれば「継続性あり」と評価される場合があります。

事業場を設けていること

「事業場」とは、店舗や事務所だけでなく、仮設の出店や巡回興行といった移動形式の事業でも、反復継続して行われる場合には該当します。つまり、固定の場所でなくとも、反復的に使用される場所や設備があれば、収益事業の要件を満たすことになります。

付随行為

収益事業には、その性質上付随して行われる行為も含まれます。たとえば、出版業を営む法人が、その出版物に関する講演会を開催したり、教材販売を行ったりするケースです。これらの行為は、直接的に34事業に該当しなくても、収益事業の延長線上とみなされ課税対象となることがあります。

収益事業の34業種一覧

以下が法人税法施行令第5条に掲げられた収益事業の34業種です。

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番号         事業名          概要
1物品販売業小売・卸売などの販売業務
2不動産販売業土地・建物の売買を反復継続して行う事業
3金銭貸付業金銭を継続的に貸し付ける業務
4物品貸付業物品の貸与(動植物なども含む)
5不動産貸付業土地や建物の賃貸
6製造業加工・製品製造
7通信業通信インフラ提供や放送業
8運送業旅客・貨物の輸送
9倉庫業寄託物の保管
10請負業業務の完成を対価で請け負う
11印刷業印刷物の製造
12出版業書籍等の発行と販売
13写真業撮影・現像など写真サービス
14席貸業有償で場所を貸す業務
15旅館業宿泊施設の提供
16飲食店業飲食の提供
17周旋業行為の媒介(例:職業紹介など)
18代理業商行為の代理(例:保険代理店)
19仲立業商行為の媒介(例:商品売買仲介)
20問屋業他者のために販売行為を行う事業
21鉱業鉱物の採掘
22土石採取業鉱物以外の土石の採取
23浴場業公衆浴場の提供
24理容業理容サービスの提供
25美容業美容サービスの提供
26興行業公演・スポーツイベントなど
27遊技所業ゴルフ・囲碁等の施設提供
28遊覧所業景観等の観覧サービス
29医療保健業医療・保健サービスの提供
30技芸教授業教育・講座の実施
31駐車場業駐車スペースの提供
32信用保証業保証料を得て信用保証を行う
33無体財産権提供業特許・著作権などの提供・譲渡
34労働者派遣業他社に労働者を派遣する業務

法人の区分と税務取扱い

一般社団法人や一般財団法人は、その設立形態や活動内容により次の2つに大別されます。

  • 非営利型法人(公益法人等)
    • 原則、収益事業に該当するもの以外は法人税が課されません。
  • 非営利型でない法人(普通法人)
    • 原則、すべての所得が法人税の課税対象です。

ただし、非営利型でない法人であっても、「公益目的支出計画」が承認され、それを完了していれば一定の事業については非課税扱いとなる場合があります。

まとめ

収益事業の理解は、非営利法人の運営において税務リスクを避ける上で非常に重要です。「公益性があるから課税されない」と思い込まず、収益事業の定義や該当業種、形式要件などを丁寧に確認する必要があります。

適切な判断を行うためには、法人税法と施行令を理解したうえで、日々の活動が収益事業に該当しないかを慎重に見極めることが重要です。

めい税理士事務所では、一般社団法人やNPO法人など、非営利法人ならではの会計・税務の悩みに、専門的にお応えします。またマネーフォワードを中心に、クラウド会計の導入から日々の運用まで丁寧にサポートいたします。

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