交際費に含まれるもの・含まれないもの②――福利厚生費や給与、会議費との線引きガイド

「交際費って結局どこまでが対象なの?」――前回の記事までは、交際費の基本と“1人1万円基準”や広告宣伝費等との違いを整理しました。今回はその続きとして、実務で迷いやすい“グレーゾーン”をさらにまとめてご紹介します。似た場面でも勘定科目が変わることがありますので、ケースごとの考え方をさらに深堀して確認していきましょう。

目次

ケースで学ぶ:勘定科目の境界線ガイド

1. 慶弔規定がなくても福利厚生費になる?

ポイント:小規模法人で慶弔規定がなくても、社会通念上相当で、かつ社内でのバランスが取れている金額なら福利厚生費でOKです。
実務のコツ:簡易でも「社内メモ基準」を作り、金額目安と対象範囲を記録。支給の都度、事実関係(続柄・事由・日付)を稟議メモに残すと安心です。

2. 創立50周年の記念品配布

従業員・元従業員に一律で、記念品として相当・1万円以下・おおむね5年以上の間隔なら福利厚生費
取引先社員への記念品は交際費
実務のコツ:注文書・配布名簿に「従業員用」「OB用」「取引先用」を明確に区分し、勘定科目も按分計上しましょう。

3. 社葬費用は交際費?

結論:原則交際費ではない。社会通念上相当で通常要する範囲の社葬費は損金算入(福利厚生費等)が可能です。
含まれる例:葬儀場費、祭壇・供花、お布施、通知・礼状、来賓送迎、運営警備、受付備品、粗品 等。
含まれない例(遺族負担):密葬費、納骨・仏具・墓地、戒名料、初七日・四十九日 等。
注意:社葬後の“精進落とし”は、事業関係者分は交際費、親族・友人分は個人負担
という整理になり得ます。

4-a. 下請企業の従業員への見舞金

専属的に自社工場・現場で従事し、自社従業員と同様の基準なら交際費ではなく福利厚生(または委託関連費)としてOKです。
類例:現場事故の見舞金、無事故達成の表彰、専属検針員等の慰安行事の費用など。
境界:専属性が弱い・自社基準から外れると交際費になりやすい。

4-b. 役員の結婚披露宴を会社負担?

結論:披露宴費用は個人的色彩が強い私的行事。会社負担は役員への賞与(損金不算入)になります。
実務の痛点:源泉徴収の追加負担・否認リスク。会社名義の会場費や引出物でも“私費”判断は変わりません。

5. 渡切交際費(定額支給で精算なし)

結論:使途報告や精算がない“定額渡し”は給与。役員へ毎月同額なら定期同額給与として損金算入は可(ただし過大なら否認です)。
回避策立替精算方式に統一(領収書+報告書+過不足精算の徹底)することでしょうか。

6. 会議費にできる昼食の範囲

会議に実体があり、社内または通常の会議場所で、通常の昼食相当(茶菓・弁当・軽食・コーヒー、ビール小瓶1本程度を含む)なら会議費
補足:“1万円基準”は交際費の特例。会議費には関係なし。通常性を超える飲食・宴席は交際費へ。

7. ゴルフクラブの入会金(返還なし)

結論:接待目的でも交際費ではなく資産計上(無形の非償却資産)。返還不可・譲渡不可でも、プレー可能である限り資産性は維持。
実務のコツ:取得時の名義書換料や仲介手数料は取得価額に含める

8. ゴルフ会員の名義書換料・年会費・ロッカー代

結論:継続的な接待のための費用として交際費に計上。
注意:他人から会員権を取得する際の名義書換料は資産の取得価額に含める点は別扱い。

9-a. ロータリークラブの入会金・会費

結論交際費が基本。特別会費は内容により寄附金給与の可能性。
類似団体:青年会議所(JC)は事業実態や使途に応じ、交際費以外で処理する余地も(要内容確認)。
実務のコツ:年会費・特別会費の使途内訳を入手し、処理を按分。

9-b. 法人制度がない社交団体の個人会員費を会社負担

原則:個人会員の入会金は給与
例外法人制度がなく、業務遂行上必要が明らかな場合は交際費として扱える。
年会費の扱い:入会金が交際費なら年会費も交際費/入会金が給与なら年会費も給与が原則。

10. 接待に伴うタクシー代(迎車・送迎・自社分)

結論すべて交際費。相手先の送迎だけでなく、自社担当者の会場往復や運転代行費も、接待に付随する限り交際費に含める。
実務の痛点:旅費交通費で計上しがち。接待との関連メモで交際費に振替を。

11. 接待を“受けに行く”タクシー代

結論:相手先の接待会場へ向かうための自社負担タクシー代は、自社の業務遂行費用であり旅費交通費(単純損金)。交際費ではない。
メモ:「自社が接待するための移動」か「他社の接待を受けるための移動」かで勘定が分かれます。

勘定科目の選び方:3つのキーと簡易フローチャート

キー①:対象は誰?

  • 取引先等 外部 → 交際費へ寄りやすい
  • 従業員・元従業員 一律 → 福利厚生費へ寄りやすい

キー②:目的・実態は?

  • 実体ある会議に付随する通常の飲食 → 会議費
  • 私的色彩(披露宴など) → 給与(役員は賞与)
  • 接待に付随(タクシー・代行・名義書換料等) → 交際費

キー③:手続と証拠は?

  • 規程・基準の有無、使途報告、過不足精算の徹底
  • 参加者・人数・単価・場所・議題(会議)・相手先・目的の記録

フローチャート(超簡易)

  1. 従業員向け一律? → はい:福利厚生費/いいえ:2へ
  2. 実体ある会議+通常飲食? → はい:会議費/いいえ:3へ
  3. 接待・贈答・慰安(外部向け)? → はい:交際費/いいえ:4へ
  4. 私的費用・定額渡し・精算なし? → 給与(役員は賞与)/その他は個別判定

証憑・運用の“型”を作る(否認リスクを下げる小ワザ)

  • 慶弔・記念品の社内基準(金額目安・対象・頻度)を1枚にまとめて回覧・保管。
  • 立替精算書は“目的・相手先・人数・単価・場所・関係性”の記載欄を固定化。
  • 会議費テンプレ:議題/目的/出席者/時間/配布物/飲食の内容(弁当数・単価)。
  • タクシー代は“接待に付随”か“業務移動”かのチェックボックスを設け、勘定のミスを防止。
  • クラブ・団体費は、入会金・年会費・特別会費で書類を分け、使途内訳を添付。

まとめ:迷ったら“対象×目的×手続”で整える

  • 従業員向け一律の慰安や記念福利厚生費に寄せ、基準と証憑で裏づけ。
  • 実体ある会議の通常飲食会議費、宴席化したら交際費
  • 接待に付随する費用(送迎・名義書換料・ロッカー代 等)は交際費へ。
  • 私的色彩の強い費用(披露宴 等)や渡切り給与(役員は賞与)
  • 会場へ“接待を受けに行く”移動費旅費交通費
  • 最後は、通常性・一律性・業務関連性と**手続(報告・精算)で総合判断。

前回に続き、“似て非なる”支出の線引きを一段深掘りしました。規程や精算の運用の型を事前に整えておくと、仕訳の迷いがぐっと減り、調査対応もスムーズになります。

めい税理士事務所では一般社団法人やNPO法人など、非営利法人ならではの会計・税務の悩みに、専門的にお応えします。またマネーフォワードを中心に、クラウド会計の導入から日々の運用まで丁寧にサポートいたします。

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