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一般社団法人等の決算で迷いがちな「附属明細書」と「注記」の考え方
こんにちは。東京都千代田区の水道橋で開業してます、税理士の竹岡悟郎です。
公益法人等の決算書類を作成する上でよく聞くのが、「附属明細書って、結局なにを書けばいいのか」「注記はどこまで必要なのか」というお悩みですね。
今回は、事業報告の附属明細書や計算書類の附属明細書、財務諸表の注記を実務目線で簡単にまとめてみたいと思います。
決算書類の全体像:附属明細書と注記は補足のしかたがちょっと違う
公益法人や一般法人は、毎事業年度について、貸借対照表や(公益法人等では)正味財産増減計算書に相当する計算書類、そして事業報告を作り、それぞれに附属明細書を付けるルールにはなっています。
最低限のセットとして、貸借対照表/正味財産増減計算書/計算書類の附属明細書/事業報告/事業報告の附属明細書が挙げられます。さらに、財務諸表に対する注記等も作成対象になるのが一般的です。
で、大事なのは、「附属明細書」と「注記」は、どちらも補足だけれど、補足のしかたが違うというのが、なんとなくあります。
- 附属明細書:明細(内訳・増減・一覧)を別で見せるイメージ
- 注記:貸借対照表や活動計算書(正味財産増減計算書)だけでは伝わらない情報を、文章+必要な数値で理解できるようにするイメージ
なお、一般的な用語として「事業報告書」は、事業報告とその附属明細書を合わせた総称として説明されることもあり、公益法人等では根拠法令や会計基準が異なる部分はありますが、「本文(本体)+補足(附属・注記)」というような考え方自体は共通です。
事業報告の附属明細書:重要な事項がないなら「ない」と書く、が基本
事業報告の附属明細書で求められるのは、「事業報告の内容を補足する重要な事項」です。
ところが実務では、「補足するほどの重要事項がそもそもない」ケースが少なくないです。というか小規模な法人だとそういったケースがはとんどではないでしょうか。その場合、何もない明細書を無理に作成する必要はなく、作成を省略する運用が想定されます。
ただし注意点が1つあり、省略する場合でも、「省略したことが分かるように」しておく必要が出てきます。具体的には、「事業報告の附属明細書」を付けて、“重要な事項がないため作成していない”旨を明示する、というような形です。
では、どんなときに「重要な事項」として書く余地が出るのでしょうか。法人ごとに判断になりますが、たとえば次のような場面でしょうか。
たとえば、年度中に大きな組織再編や事業方針の転換があった、主要な助成金・寄付に重要な条件(使途制約等)が付いていた、訴訟・行政対応などガバナンス上の重要事象があった、役員体制が大きく変わった――こうした内容は、事業報告本文だけでは文脈が伝わりにくいことがあります。
このとき、本文と重複しない範囲で読み手が誤解しないために分かりやすく説明するのが、附属明細書の使い方です。
計算書類の附属明細書:原則は「固定資産」と「引当金」+その他重要事項
計算書類の附属明細書は、法令上、概ね次のようにまとめられます。
- 重要な固定資産の明細
- 引当金の明細
- 貸借対照表・損益計算書等の内容を補足する重要な事項
ここでのポイントが、「注記で同じ内容をきちんと書いているなら、附属明細書側は“注記に記載”と示して省略できる」ということです(重複を避けて、読みにくくしない)。
実務上は、基本財産・特定資産の増減と残高、引当金(退職給付等)の増減と残高などが、附属明細書と注記で役割が重なりやすい代表例です。
作り方としては、次のイメージです。
まず固定資産台帳や資産管理の資料から「増減・残高」を整理し、次に引当金の設定根拠と期首期末・増減を整理する。そのうえで、注記に落とすべき内容(会計方針、制約のある資産、重要な後発事象など)を決め、最後に「附属明細書でどこまで書くか」を整える。
この順番だと、数字の整合が取りやすく、やり直しが減ると思います。
財務諸表の注記:数字の意味を伝える、いちばん説明力のある場所
注記は、貸借対照表や活動計算書(正味財産増減計算書)だけでは表現しきれない情報を補う場所で、とくに公益法人会計基準では、注記項目が体系立てて整理されており、その中には「継続事業の前提に関する注記」も含まれます。
たとえば継続事業の前提については、単に資金繰りが厳しいというだけで必ず注記、というより、「重要な疑義を生じさせる事象等があり、対応策を講じてもなお重要な不確実性が認められるとき」に注記する、ということが示されています。
一方で、注記は“義務だから埋める欄”ではなく、法人の透明性を上げる武器でもあり、たとえば(法人の状況に応じて)次のような情報は、読み手の理解を一段進めます。
重要な会計方針(減価償却の方法、引当金の考え方、消費税の処理など)を明記すると、同じ数字でも見え方が変わり、事業別の内訳を注記で示せば、「どの事業にどれくらい使っているか」が伝わり、説明の納得感が増すのではないでしょうか。
無償提供やボランティアの役務提供など、非営利法人に特徴的な活動をどう扱うかも、注記があると読み手に親切ですね。さらに、使途が制約された寄付等がある場合には、会計基準ごとの考え方に沿って、制約の内容と残高の考え方が分かるようにしておくと、外部への説明がとてもに楽に分かりやすくなります。
まとめ:3つの補足書類は、役割分担すれば迷いが減る
- 事業報告の附属明細書:本文を補う「重要事項」。なければ“ない旨を明示”して省略するのが現実的。
- 計算書類の附属明細書:固定資産・引当金などの明細が中心。注記と役割が重なる部分は整理して読みやすく。
- 財務諸表の注記:数字の意味を伝える説明書。継続事業の前提など、基準が求める開示もここで対応。
「何を書けばいいか」で悩んだら、まずは ①読み手が誤解しないか ②あとから説明できるか ③監督官庁・関係者に見せて耐えるか の3点で考えるのが良いのではないかと思います。
そのうえで、附属明細書と注記の住み分けができれば、決算書類はぐっと作りやすくなります。

