【速報】税制改正大綱2026(令和8年度)|年収の壁178万円・NISA未成年・インボイス特例も

こんにちは。東京都千代田区で開業しています、税理士の竹岡です。

税制改正大綱。毎年この話題がやって来ると、「今年ももう暮れやね・・」

と言ってる場合ではなく、何がどう変わったのか、しっかりと見ていかなければいけません。

令和8年度(2026年度)大綱でも、物価高への配慮としての減税・負担軽減がある一方で、国の財源確保や高所得層への見直しも並びました。

目次

個人所得税

「年収の壁」対策と暮らしの支援(所得税・住宅・投資)

いわゆる課税最低限(基礎控除+給与所得控除の最低保障額)が、令和8・9年は178万円へ引き上がります。さらにこの上乗せの恩恵は、年収665万円までと示されています。

給与所得控除の最低保障額は74万円(本則69万円+特例5万円)とされ、9万円の引上げとなりました。パート・アルバイトの就業調整や、扶養内の働き方を考える家庭ほど影響を感じやすいポイントです。

なお、年収665万円から850万円は、基礎控除は67万円、
年収850万円から2,454万円は、基礎控除+給与所得控除は62万円と変化していきます。

この時点で複雑すぎてよう分からんですね。

住民税の非課税ラインは119万円になります(基礎控除45万円+給与所得控除74万円)。うーん。

住宅ローン減税は“延長+中身の組替え”。中古支援が厚くなる

住宅ローン減税は、令和12年入居分まで5年延長。その上で、

  • 新築(省エネ基準適合住宅)は将来的に対象外・限度額縮小(令和10年以後対象外の方向)
  • 中古は支援を拡充し、認定住宅等の借入限度額が最大4,500万円、控除期間も13年
  • 災害危険区域等(いわゆる災害レッドゾーン)の新築は対象外

    といった感じに

「新築か中古か」「立地が要件に触れないか」で有利不利が分かれやすいので、購入前の確認が重要です。

NISAは未成年へ拡大。「いつ引き出せるか」までルール化

つみたて投資枠は、0~17歳にも拡充。年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円とされています。
また、払出しは12歳以後、子の同意などを求めることで、親が自由に引き出せない歯止めが入っています。

「教育費の備え」として制度を寄せてきた印象で、学資保険の代替として検討する家庭も増えそうです。

投資・富裕層・財源:増税とルール変更が同時進行

暗号資産は“分離課税化”。対象範囲・時期が実務の山場

暗号資産は、健全な取引環境の法整備を前提に、現物・デリバティブ・ETF等から生ずる所得を申告分離課税(約20%)へ移す方向へ。

さらに、分離課税でも損失の繰越(最大3年)が可能に。
一方で、超高所得者のミニマム課税が絡むと20%で終わらないケースもあり、利益確定のタイミングが論点になりそうです。

ふるさと納税は「超高所得層」に上限。自治体の経費率も締める

住民税の特例控除額に、令和9年寄附分から定額上限193万円を設定。

また、自治体が使える財源割合を6割以上にするため、経費率を5割→段階的に4割へ引き下げる方針です。

高額寄附をしていた方は、寄附戦略を「上限到達の有無」で見直す必要が出てきます。

青色申告:65万円控除の“当たり前”が変わる(電子申告が前提へ)

大綱では、青色申告特別控除が「デジタル化・記帳水準の底上げ」を目的に見直されます。ポイントは次の3つ。

  • 65万円控除:複式簿記に加えて、電子申告が要件に追加される(=紙申告のままだと満額が取りにくくなる)
  • さらに一定要件を満たすと、75万円控除の道も出てくる(優良な電子帳簿、請求書データ等との自動連携など)
  • 簡易簿記の10万円控除は、一定規模(例:収入金額1,000万円超)で“実質ゼロ”方向の制限が示されています(令和9年分以後)。

もう書面申告は10万円控除のみとなってしまいました。また収入が1,000円超になってくると、実質はもう複式簿記のみしか認められないし、電子申告ができる環境が必要になってくるので、税理士への依頼が増えるのでしょうか。

インボイス:個人だけ「3割特例」。法人は対象外

課税事業者を選択してインボイス発行事業者になっている個人事業者について、2年の経過措置として「3割特例(売上税額の3割を納税)」を認める整理です(令和9・10年の各課税期間)。

対象は個人のみ、法人は対象外と明記されています。なぜ・・。

8割控除:期限延長の一方で“上限1億円”の制限も

免税事業者等からの仕入れに係る8割控除は、激変緩和の観点から期限を延長しつつ、租税回避防止として「一の免税事業者等ごとの年間適用上限額」を10億円→1億円へ引き下げる方針です。

福利厚生:通勤手当・食事補助がアップデート

マイカー通勤手当は、65km以上の区分新設(上限66,400円)と、駐車場代(月5,000円まで)を非課税に加算する案です(令和8年4月以後)。

さらに食事支給は、非課税限度額が月額7,500円(現行3,500円)へ引き上げられ、深夜勤務の夜食代も1食650円(現行300円)へ引上げとされています

昨今の物価上昇を考えると、1月で3,500円は低すぎましたね。

少額減価償却:30万円→40万円未満へ(地味に効く“投資しやすさ”)

中小企業の少額減価償却資産の特例が、取得価額の基準を「30万円未満」から「40万円未満」へ引き上げる案です(年300万円上限、従業員400人超は除外)。

これまで30万円を超えると資産計上・償却になりがちでしたが、40万円未満まで一気に“使いやすい金額帯”が広がります。結構30万円台のパソコンって多かったので、これはいいですね。上限300万円までというのは変わりませんが。

賃上げ促進税制:上乗せ措置の整理でメニューの組み替えが必要

賃上げ促進税制は、見直しの中で中小企業向けの教育訓練費上乗せ措置(+10%)が廃止される方向が示されています。控除率の上限も最大45%→35%に。

大企業は令和8年度で廃止、中堅企業も要件強化のうえ令和9年度で廃止方向へとなるようです。

「研修を増やせば税額控除が厚くなる」という発想は、別の形で組み直す必要が出てきます。

大型投資:即時償却 or 税額控除7%(使い切れない分の繰越も)

大規模投資を促す新たな枠として、一定要件を満たす投資について、即時償却または税額控除(最大7%)を選べる制度が創設される方向です。

税額控除には上限(例:法人税額の20%)がありつつ、場合により使い切れない分の繰越も想定されています。

資産税

今回の大綱は、資産家・高所得層の方にとって、はっきりとルールが変わる改正が目立っている気がします。

特に大きいのは、①超高所得者へのミニマム課税の強化、②ふるさと納税の上限設定、③相続直前の不動産取得を狙った評価方法の見直しです。

超高所得者:ミニマム課税が広く・強くなる(30%へ)

ミニマム課税は、特別控除額を3.3億円→1.65億円へ引下げ、税率も22.5%→30%へ引上げる方向です(令和9年分以後)。

株式・不動産の売却益など、分離課税中心で所得が大きくなる年は、追加負担が生じやすくなります。

令和8年と9年で負担が変わり得るため、売却タイミングの検討がテーマになりそう。

相続対策:相続直前の投資用不動産で評価圧縮が効きにくくなる

相続開始・贈与前5年以内に、対価を伴う取引で取得・新築した一定の貸付用不動産について、評価を「路線価等」ではなく、通常の取引価額相当で評価する方向です。

課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価変動を加味した価額の80%相当で評価可能、という整理も示されています。

また、不動産小口化商品も、取得時期にかかわらず、通常の取引価額相当で評価する方向が示されています。

贈与:教育資金一括贈与は廃止へ。代替策を早めに決める

教育資金一括贈与の非課税制度は、令和8年3月31日までで廃止とされています。とうとう本当に廃止されちゃいましたね。

既に契約している場合でも、追加拠出の期限管理が重要で、今後は「都度贈与」や暦年課税・相続時精算課税の使い分けがテーマになります。

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いろいろ大きな変化がありそうですが、ざっと主なところを取り上げてみました。もっと細かいところは改めて。

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