中小企業の設備投資を後押しする「中小企業経営強化税制」とは?

こんにちは。東京都千代田区で開業しています、税理士の竹岡悟郎です。

「そろそろ生産設備を入れ替えたい」「デジタル化に投資したいけれど、資金面が心配…」
そんな中小企業の皆さんを後押ししてくれるのが、今回ご紹介する中小企業経営強化税制です。

設備投資は、売上アップや生産性向上、働き方改革など、会社の将来をつくるために欠かせない取り組みです。一方で、まとまったお金が必要になるため、「本当に今やるべきか…」と悩まれる経営者の方も多いと思います。

そこで活用したいのが、税金の仕組みを活かして、設備投資の負担を軽くする制度です。この記事では、中小企業経営強化税制の概要と、4つの設備類型を簡単にではありますが、ご紹介します。

目次

中小企業経営強化税制ってどんな制度?

中小企業経営強化税制は、「中小企業等経営強化法」に基づく「経営力向上計画」の認定を受けた中小企業が、対象となる設備投資を行った場合に使える税制優遇です。

対象設備を取得・製作した場合に、次のどちらかを選ぶことができます。

  • 即時償却
    → 投資した金額を、その年の経費として一気に計上できる
  • 税額控除(取得価額の10%または7%)
    → 本来支払うはずの法人税額から直接差し引くことができる
    ※資本金3,000万円超の法人は7%、それ以下は10%

「何年もかけて少しずつ経費にしていく」のではなく、早いタイミングで一気に経費化したり、税額を直接減らしたりできるため、資金繰り面で非常に大きな効果を期待できます。

この制度を使うためには、次のいずれかの設備を導入する経営力向上計画について、国から認定を受けることが必要です。

  • 生産性向上設備(A類型)
  • 収益力強化設備(B類型)
  • 経営資源集約化設備(D類型)
  • 経営規模拡大設備(E類型)

詳しい制度の概要は、中小企業庁のページでも確認できます。
➡︎ https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/kyoka_zeisei.html


4つの設備類型をわかりやすく整理

ここからは、それぞれの類型について、ポイントだけギュッと凝縮して見ていきましょう。

① 生産性向上設備(A類型)

A類型は、「今使っている設備よりも、生産性がしっかり上がる」ことを数字で証明できる設備が対象です。

  • 旧モデルと比べて、生産性が平均1%以上向上すること
  • 対象になるのは、最新モデルの機械装置、工具、器具備品、ソフトウェアなど
  • 設備メーカーなどから発行される証明書を取得し、計画認定時に添付する

イメージとしては、
「古い機械を最新モデルに入れ替えることで、同じ時間で作れる量が増える」
「ソフトウェアの導入で作業時間が短縮される」
といったケースが当てはまります。

② 収益力強化設備(B類型)

B類型は、「投資した結果、しっかり利益が出るか」に着目した、より戦略的な設備投資が対象です。

  • 導入する設備により、投資利益率が7%以上になる見込みがあること
  • 設備投資計画全体で「投資した金額に対して、どのくらい利益が見込めるか」を試算する
  • 経済産業局から確認書の取得が必要

「この設備を入れることで、新しいサービスを展開できる」「高付加価値の商品を生み出せる」など、収益アップにつながる投資に向いている類型です。

③ 経営資源集約化設備(D類型)

D類型は、主にM&Aや事業承継に伴う設備投資を対象とした類型です。

  • 他社との統合や事業承継により、工場や設備などの経営資源を集約する場面での投資が対象
  • B類型と同様に、経済産業局から確認書を取得する必要あり

たとえば、「子会社の工場機能を親会社工場に集約するための設備投資」や「事業承継に合わせて老朽設備を入れ替える」ようなケースがイメージしやすいと思います。

④ 経営規模拡大設備(E類型)

E類型は、令和7年度税制改正で新たに設けられた類型です。特徴は次のとおりです。

  • 工場などの新設・増設にともなう建物やその附属設備が対象
  • 売上高100億円超を視野に入れた事業拡大を計画している企業の後押しが目的

「新たな拠点を立ち上げる」「既存工場を大幅に増床する」など、攻めの成長投資を検討している企業には、ぜひ選択肢に入れていただきたい類型です。


活用のポイントと注意したい期限

中小企業経営強化税制を上手に活用するためには、次の点を意識しておくとスムーズです。

  1. まずは計画づくりから
    どのような設備を導入し、売上や生産性、利益にどんな効果が見込めるのかを整理し、
    「経営力向上計画」としてまとめます。
  2. 認定手続きが必要
    ただ設備を買えば自動的に優遇が受けられるわけではありません。
    類型によって、メーカーの証明書や経済産業局の確認書が必要になり、
    そのうえで国の認定を受ける流れになります。
  3. 2027年3月31日までの期間限定制度
    適用期限が決まっているため、
    「いつか検討しよう」ではなく、逆算して早めに動くことが大切です。

制度自体は非常に心強い内容ですが、要件や手続きはどうしても専門的になりがちです。
「うちの設備投資はどの類型に当てはまりそうか」「即時償却と税額控除、どちらが有利か」といった点は、税理士などの専門家と一緒に検討するのがおすすめです。


まとめ:設備投資+税制活用で、会社の未来をつくる

中小企業経営強化税制は、

  • 生産性向上
  • 収益力アップ
  • M&A・事業承継
  • 経営規模の拡大

といった、それぞれのステージに合わせた設備投資を、税制面から強く後押ししてくれる制度です。

「そろそろ設備投資を考えたい」「攻めの一手を打ちたい」という経営者の方は、
この制度を前提に投資計画を組み立てることで、キャッシュフローの不安を軽くしながら前向きな一歩を踏み出すことができます。

設備投資と税制をうまく組み合わせて、貴社の競争力強化と持続的な成長につなげていきましょう。

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