公益法人等におけるみなし寄附金とは?〜税務上の取扱いと実務上の留意点〜

公益社団法人や公益財団法人は、社会の役に立つ事業を行う存在として、一般の営利法人とは異なる税制上の取扱いがなされています。その中でも「みなし寄附金制度」は、収益事業で得た利益を公益目的事業に活用する際に、税務上の優遇措置を受けられる重要な制度です。

今回はこの「みなし寄附金制度」について、社団法人や認定NPO法人との違いなど、お伝えしていきたいと思います。

目次

みなし寄附金制度とは何か

制度の基本的な仕組み

公益法人等に対しては、原則として収益事業から得た所得のみに法人税が課されます。そのため、公益目的事業での支出については課税対象外となりますが、収益事業から公益目的事業に資金を移す場合に、いわゆる「区分経理」が求められます。

このとき、収益事業から公益目的事業へ資産を移した金額のうち、一定の条件を満たすものについては「寄附金があった」とみなして税務上の損金に算入することができるという、それが「みなし寄附金制度」になります。

本来、法人内での資金移動は「寄附」ではありませんが、公益法人等の社会的役割を尊重し、その収益が公益のために使われるのであれば、課税対象から除外しようという考えがこの制度の背景にあります。

対象となる法人と制限

みなし寄附金制度は、公益社団法人および公益財団法人に限って適用される制度です。非営利型の一般社団・一般財団法人であっても、みなし寄附金制度の対象には含まれません。また、みなし寄附金とされるのは、収益事業から公益目的事業に対して実際に支出された金額に限られます。

一般社団法人等が受けた寄付金についてはこちらの記事からご覧ください。

税務上の取扱いと損金算入限度額

損金算入が認められる上限の仕組み

みなし寄附金とされた金額は、すべてが損金算入されるわけではありません。税務上は以下のいずれか多い方の金額までが損金として認められます。

  • 収益事業から生じた所得金額の50%相当額
  • 公益目的事業の実施のために必要な金額(=公益法人特別限度額)

この「公益法人特別限度額」は、公益目的事業に必要な支出額から、事業収入を差し引いた「収支不足分」を指し、申告書の別表により計算します。

区分経理と実際の支出の扱い

制度を適用するうえで注意すべきは、「区分経理」だけでは損金算入の対象とはならず、実際に収益事業の資産が公益目的事業に使われたという事実が必要です。

ただし、当期に支出しなかった場合でも、公益目的で使用することが確定し、その旨が区分経理で明確にされていれば、みなし寄附金として扱われる可能性があるとされています。

他の法人類型との比較と留意点

一般社団・財団法人には適用されない

非営利型であっても、一般社団法人や一般財団法人にはみなし寄附金制度は適用されません。これらの法人が公益性のある活動に資金を振り向けたとしても、その支出は損金算入の対象にはなりません。

ただし、特定公益増進法人(例:日本赤十字社、社会福祉法人等)への寄附については、法人税法上、一定の限度額までは損金算入が認められます。

認定NPO法人におけるみなし寄附金

認定NPO法人についても、同様にみなし寄附金制度が存在し、収益事業から特定非営利活動事業への資金移動があった場合に、その金額を一般寄附金とみなして損金算入することができます。

この場合、損金算入限度額は「収益事業所得の50%または200万円のいずれか多い額」となっています。ただし、後に認定が取り消された場合には、過去7年以内の損金算入額が遡って益金に加算されるという「取戻し課税」があるため、制度の運用には慎重さが求められます。

実務上のポイントと会計処理

他会計振替額との関係

会計上、「他会計振替額」として収益事業会計から公益目的事業会計への資金移動がある場合、それがみなし寄附金の対象とされることになります。これは、正味財産増減計算書内訳表にも反映され、税務申告上は別表十四(二)の付表を用いて損金算入額を算定する必要があります。

正しい申告で制度の恩恵を最大限に

みなし寄附金制度の恩恵を受けるには、区分経理を適正に行うこと、別表を正確に作成することが前提です。税務署に対して説明できる根拠資料の整備や、理事会での支出決定の記録など、形式面の対応も欠かせません。

特に公益目的事業に該当するかどうかの判断、収支相償基準(新たに「中期的収支均衡」という名称に変わりました)との整合性などは慎重に検討する必要があります。

おわりに 〜公益活動と税制の調和のために〜

みなし寄附金制度は、公益法人等が収益活動を通じて得た利益を社会に還元しやすくするための税制上のしくみです。うまく活用することで、税負担を軽減しつつ、公益目的事業への資金投入を円滑に進めることができます。

とはいえ、制度の理解と正しい運用には専門的な知識が求められるため、公益法人の運営に携わる方は、税理士などの専門家と連携して適切に対応することが必要になってきますが、なかなか対応してくれる税理士がいないことが現実です・・(ちなみにめい税理士事務所も公益法人の対応はまでは出来かねます・・)

めい税理士事務所では一般社団法人やNPO法人など、非営利法人ならではの会計・税務の悩みに、専門的にお応えします。またマネーフォワードを中心に、クラウド会計の導入から日々の運用まで丁寧にサポートいたします。

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