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一般社団法人等が適用する会計基準とは?―非営利法人の会計の考え方
こんにちは。千代田区水道橋の税理士竹岡悟郎です。今回は一般社団法人・一般財団法人の特に非営利型法人の会計基準についてのお話になります。
一般社団法人や公益社団法人といった非営利法人でも、事業を行う以上、日々の会計処理や決算業務は欠かせません。しかし、株式会社などの営利法人とは目的も構造も異なるため、「どの会計基準を使えばよいのか?」「普段の仕訳はどうするのか?」と悩まれることも多いのではないでしょうか。
この記事では、非営利法人に適用される会計基準の概要と、実際の会計処理・ソフトの活用方法、消費税の注意点までをやさしく解説していきます。
法令が定める「会計基準」の位置づけ
まず、一般社団法人や公益法人がどのような会計基準に従うべきかは、実は法令上は明確にひとつに定められているわけではありません。しかしながら、以下のような規定がそれぞれの法人類型に適用されています。
【図表】適用する会計基準に関する法令上の定め
法人類型 | 法令上の会計基準の取扱い |
---|---|
公益社団・公益財団法人 | 「一般に公正妥当と認められる公益法人の会計の基準その他の公益法人の会計の慣行を斟酌しなければならない」(公益認定法施行規則第12条) |
一般社団・一般財団法人 | 「一般に公正妥当と認められる会計の基準その他の会計の慣行を斟酌しなければならない」(一般法人法施行規則第21条) |
移行法人 | 同様に「公正妥当な会計の基準を斟酌すべき」と規定(整備法施行規則第1条) |
これらはすべて、「一定の基準に基づいて会計処理を行うべきである」という趣旨を示すものであり、特定の会計基準を義務づけてはいない点が共通しています。
推奨される会計基準:公益法人会計基準
法人が採用する会計基準については、公益法人会計の実務指針や内閣府のFAQにおいて、「公益法人会計基準(平成20年基準)」の選択適用が推奨されています。なぜなら、非営利法人であるこれらの法人は、営利企業とは会計の目的や活動の構造が異なるからです。
内閣府FAQや実務指針では次のような指針が示されています。
- 非営利法人は利潤の分配を目的としないため、営利企業向けの企業会計基準よりも公益法人会計基準が適している
- 一般社団法人であっても、会費・補助金などを中心とした非営利活動を行っているなら、公益法人会計基準の採用が自然
- 反対に、物販事業など営利性の高い活動が中心であれば、企業会計基準を選ぶことも可能
つまり、法人の目的と実態に応じて、自ら選択する姿勢が大切ということになります。
企業会計基準を使う場合は?
すべての法人が公益法人会計基準を使わなければならないわけではありません。たとえば、以下のようなケースでは逆に企業会計基準の適用の方が良いとも考えられます。
- 公益認定を受ける予定のない一般社団法人・一般財団法人
- 主な事業が対価を伴う営利的なもので、企業と同様の業務を行っている法人
- 財務諸表を行政庁等に提出する義務がなく、外部説明責任が限定的な法人
このような場合、企業会計基準によるほうが法人の事業実態を的確に表現できると判断されることもあります。
一般法人の日常仕訳と帳簿処理
では、会計ソフトなどを使った日常の経理処理はどうすればよいのでしょうか?
基本的な仕訳は「株式会社と同じ」でOK
仕訳の処理や帳簿の形式は、通常の株式会社向けの会計ソフトをそのまま使っても問題ありません。実際、多くの中小規模の非営利法人では、弥生会計やマネーフォワードなどのソフトを流用しています。
ただし、注意点があります。
純資産の部が異なる
一般社団法人や公益法人には、「資本金」が存在しません。そのため、貸借対照表の純資産の部では、利益剰余金のみで経理処理されます。さらに細かいところをいえば「正味財産」や「一般正味財産」「指定正味財産」といった科目を使うこともあります。
例えば、下記のような処理に。
【営利法人】 資本金/現金
【非営利法人】正味財産増減/現金
会計ソフトによっては、科目名を変更したり、カスタマイズ機能を活用したりすることで対応可能です。
消費税処理の留意点:特定収入計算
非営利法人に特有の留意点として、**消費税の「特定収入計算」**があります。
特定収入とは?
消費税法第60条第4項に基づき、補助金収入や会費収入といった「対価性のない収入」がある場合、仕入税額控除の制限がかかることがあります。たとえば、補助金で購入した備品などの消費税は全額控除できない可能性があるのです。
この計算はやや複雑で、次のような処理が求められます。
- 補助金収入割合を元に、共通仕入にかかる税額を按分
- 会費収入も「特定収入」として課税売上割合から除外
- 通常の企業向け会計ソフトでは対応が難しい場合がある
実務上の対応方法
中小規模の法人では、簡易課税や免税事業者であることも多いため、初期段階で気にする必要はありませんが、一定規模を超えて課税事業者になる場合は、税理士などの専門家に相談して処理の設計を行うことが重要です。
まとめ:非営利法人に合った“ちょうどいい”会計基準を
非営利法人であっても、財務情報の適切な把握と説明責任は欠かせません。そしてその根幹となるのが、適切な会計基準の選択です。
以下のようなポイントを押さえておきましょう。
- 法律で強制されてはいないが、「公正妥当な会計慣行」に従う必要がある
- 通常は、平成20年公益法人会計基準が最も推奨される
- 日常仕訳は通常の会計ソフトで対応可能だが、純資産区分の違いには注意
- 消費税処理は特定収入の考慮が必要で、規模が大きくなると専門家の関与が望ましい
めい税理士事務所では、一般社団法人・公益法人を中心に、会計・税務の導入支援を行っています。「会計基準をどう選べばよいかわからない」「補助金や会費の仕訳処理が不安」など、些細な疑問にも丁寧にお応えします。
ぜひお気軽にご相談ください。
みなさまの法人経営を、会計の面からしっかりとサポートいたします。