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一般社団・財団法人・公益法人の「決算書類」ってどんなもの?
こんにちは。千代田区水道橋の税理士竹岡悟郎です。今回は一般社団・財団法人や公益法人が作成する決算書類について簡単にお伝えしたいと思います。
「決算書類」と聞くと、一見難しそうな印象を持たれるかもしれません。でも、一般社団法人や財団法人、公益法人といった非営利法人にも、事業年度ごとにきちんとした会計書類の作成義務があります。
この記事では、これらの法人が作成すべき決算関係書類の種類や保存・閲覧ルールをわかりやすくご紹介します。
一般社団・財団法人が作成すべき決算関係書類
一般社団法人・財団法人では、会社とは少し異なる特有の会計ルールに従って「計算書類等」を作成します。主に次の書類が必要です。
- 計算書類(貸借対照表・損益計算書)
- 事業報告書
- 附属明細書(上記の補足情報)
- 監事監査報告書(監事設がいる場合)
- 会計監査人監査報告書(会計監査人がいる場合)
これらを総称して「計算書類等」と呼び、作成後は定時社員総会の1〜2週間前から5年間、主たる事務所に備え置く必要があります(従たる事務所がある場合は従たる事務所にも3年間備え置き)。
また、作成日から10年間の保存義務がある書類もあり、単なる「保存」と「備置き」は異なることに注意が必要です。備置きとは、閲覧請求があったときに即座に開示できるようにしておく状態のことです。
公益法人が追加で作成すべき書類
公益社団法人や公益財団法人は、上記の計算書類等に加えて、次の書類も作成・備え置く必要があります。
事業年度開始前までに必要な書類
- 事業計画書
- 収支予算書(正味財産増減計算書ベースの損益予算)
- 資金調達および設備投資の見込み
これらは、事業年度開始日の前日までに作成し、その年度末まで備置きする義務があります。
事業年度終了後3ヶ月以内に作成する書類
- 財産目録
- 役員等名簿
- 報酬等支給基準
- キャッシュフロー計算書(該当法人のみ)
- 運営・事業活動の状況に関する重要情報のまとめ
これらを含めた一式は「財産目録等」と呼ばれ、誰からの閲覧請求にも応じなければなりません(正当な理由がある場合を除く)。
公益法人会計基準における「財務諸表等」とは?
公益法人は、会計の透明性を確保するために、法人法とは異なる独自の会計基準(公益法人会計基準)に基づいて財務諸表を作成します。
作成が必要な財務諸表等
- 貸借対照表
- 正味財産増減計算書(PLに相当)
- キャッシュ・フロー計算書(作成義務のある法人のみ)
- 附属明細書
- 財産目録
キャッシュ・フロー計算書は、収益1,000億円以上または負債50億円以上の「大規模公益法人」に限って作成が義務づけられており、それ以外の法人は省略可能です。
また、財産目録は非常に重要な書類とされ、資産・負債を用途別・事業別に明示する必要があります。公益法人は非課税制度や寄附金優遇を受ける代わりに、厳格な資産管理・開示義務が課されています。
事業報告・計算書類に添付する「附属明細書」とは?
附属明細書とは、計算書類や事業報告の内容を補足するための詳細資料です。作成は義務づけられており、具体的には次の内容が記載されます。
附属明細書の主な記載項目
- 有形・無形固定資産の明細
- 引当金の明細
- 販売費・一般管理費の明細
- その他の重要な事項(必要に応じて)
記載内容が財務諸表等の注記と重複する場合は、「注記に記載済みである旨」を明記すれば省略可能です。
附属明細書の様式(図解)
附属明細書にはひな型があり、以下のような形式で作成します。
【図1】有形・無形固定資産の明細(取得原価方式)
区分 | 資産の種類 | 期首残高 | 当期増加額 | 当期減少額 | 期末残高 | 期末減価償却累計額 | 当期償却額 | 差引期末帳簿価額 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
有形固定資産 | 土地 | ○円 | ○円 | ○円 | ○円 | ○円 | ○円 | ○円 |
無形固定資産 | ソフトウェア | ○円 | ○円 | ○円 | ○円 | ○円 | ○円 | ○円 |
※備考:固定資産に関する重要な増減(例:災害による滅失等)がある場合は、脚注等で補足が必要です。
【図2】引当金の明細(減少額を区分する形式)
科目 | 期首残高 | 当期増加額 | 当期減少額(目的使用) | 当期減少額(その他) | 期末残高 |
---|---|---|---|---|---|
賞与引当金 | ○円 | ○円 | ○円 | ○円 | ○円 |
【図3】販売費及び一般管理費の明細
科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|
広告宣伝費 | ○円 | ○○の広告費 |
旅費交通費 | ○円 | 役員・職員の出張費など |
… | … | … |
合計 | ○○円 | – |
おわりに:書類作成は「説明責任の第一歩」
法人の信頼性は、しっかりとした会計書類の作成と公開から始まります。一般社団・財団法人であっても、公益法人であっても、その活動内容や資金の使途を「見える化」することは非常に大切です。
附属明細書のような補足資料を含めて丁寧に作成することが、関係者や社会に対する説明責任を果たす第一歩になります。制度の趣旨を正しく理解し、実務で活かしていきましょう。
めい税理士事務所では一般社団法人やNPO法人など、非営利法人ならではの会計・税務の悩みに、専門的にお応えします。またマネーフォワードを中心に、クラウド会計の導入から日々の運用まで丁寧にサポートいたします。