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一般社団法人の社員総会運営とは?招集から議事録作成までの基本をやさしく解説
こんにちは。千代田区水道橋の税理士竹岡悟郎です。今回は一般社団法人等における社員総会運営について、招集手続きから議事録作成で気を付けることまでを分かりやすくお伝えしたいと思います。
一般社団法人を運営する中で、年に一度は必ず行われる「社員総会」。でも「何を決める場なの?」「どうやって準備するの?」と、戸惑う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、社員総会の招集から開催、議事録の作成まで、実務的な運営の流れをわかりやすく解説します。形式的になりがちな会議でも、少しの工夫と準備で、法人運営を円滑に進める力になります。
社員総会の招集と通知のポイント
社員総会は、理事会の決議によって招集されます。招集に際しては、日時や場所、議題の内容などを定め、書面で通知を行う必要があります。
基本的な招集手続き
社員総会の開催には、以下の事項を明記した招集通知が必要です。
- 開催日時と場所
- 議題(目的である事項)
- 役員の選任、報酬等の議案
- 議決権行使方法(書面や電磁的方法を認める場合はその旨)
定時社員総会においては、招集通知に下記書類を添付する必要があります。
- 理事会の承認を受けた計算書類(貸借対照表及び損益計算書)
- 事業報告
- 監査報告
この招集通知は、原則として社員総会の1週間前までに、社員に対して発する必要があります。定時社員総会では、年度決算や事業報告を決議するため、事前に理事会の承認を得た書類の準備が求められます。
なお、社員全員が同意すれば、正式な招集手続きを省略して社員総会を開くことも可能ですが、この場合も理事会の招集決定は必要です。
招集通知の実務
招集通知は、書面のほか、電子メールでも送付可能です。ただし、電話による招集は一定の場合を除き原則として認められていないため注意が必要です。社員の承諾があればファックスも可とされます。
また、招集通知に記載すべき議案は、書面議決を行う場合にはすべて記載する必要があります。そうでない場合は、主要な議案のみ概要を示すことでも構いません。
社員総会の当日〜決議の進め方
社員総会では、法人運営に関する重要事項を決定します。手続きが煩雑に見えますが、基本的な流れを押さえておけば、スムーズに進行できます。
決議事項の主な内容
社員総会の決議事項には、以下のような重要項目が含まれます。
- 役員(理事・監事)の選任・解任
- 役員(理事・監事)の報酬(定款で定められていない場合)
- 定款変更
- 計算書類の承認
- 解散、合併など法人の根幹に関わる事項
- 社員の除名
- 基金の返還など
これらのうち、定款変更や解散、除名など特に重大な事項は「特別決議」が必要で、議決には社員全体の過半数が出席し、かつそのうちの3分の2以上の賛成が必要となります。それ以外の事項は「普通決議」で、出席者の過半数の賛成で可決されます。
議長の選出と役割
社員総会では、議長が進行役を担います。議長は代表理事が務めることが多いですが、出席社員の中から互選で選ばれることもあります。議長には、会議の秩序を保ち、円滑に進行する責任があります。
理事・監事の出席義務
法人法上、理事や監事が社員総会に出席する義務は明文化されていませんが、社員からの質問に対応し説明責任を果たすためにも、原則として出席することが求められます。遠方からの参加などの事情がある場合には、テレビ会議やウェブ会議での出席も可能です。
議決権行使とハイブリッド開催の工夫
近年では、社員の多様な事情に配慮し、会場に来られない社員でも議決権を行使できるようにする取り組みが進んでいます。
書面・電磁的方法による議決権行使
社員が出席しない場合でも、事前に書面やメール等で議決権を行使することができます。これを実施するには、以下のような準備が必要です。
- 理事会での事前決議
- 議案・提案理由等を記載した参考資料の添付
- 議決権行使書面の様式と提出期限の明示
提出された議決権行使書面は、社員総会当日において出席者の議決権と同様にカウントされます。これにより、会場に来られない社員の意見も法人運営に反映されます。
また、これらの書面は、社員総会の日から3か月間、主たる事務所に備え付ける義務があります。電磁的方法による議決も、同様にその記録を備置する必要があります。
代理人による出席と委任状
社員が直接出席できない場合、代理人に議決権を行使してもらうことも可能です。その際には、代理権を証明する委任状を法人に提出する必要があります。定款に記載がなくても、代理行使は可能です。
バーチャル社員総会の限界と工夫
現行の法人法では、完全なオンライン(バーチャル)社員総会は難しく、物理的な会場の設定が必要とされています。
しかし、参加者の安全を考慮しつつ、必要最小限の人数で会場を設け、他の社員はオンラインで参加する「ハイブリッド型」方式が注目されています。これは、経済産業省が提唱する株主総会の開催方式に倣ったもので、社員の利便性と法的整合性のバランスを取る工夫です。
社員総会後の議事録作成と管理
社員総会が終わったら、議事録の作成と保管も重要な業務です。
議事録の記載内容と署名
議事録には、次の項目を記載します。
- 開催日時と場所
- 議事の経過と結果の概要
- 出席した理事・監事の氏名
- 議長の氏名
- 議事録の作成者
議事録署名人については法人法上の規定がないため、定款に署名人を定めておくことが一般的です。
議事録の備置義務
作成した議事録は、社員総会の日から10年間、主たる事務所に備え置く義務があります。これは、将来のトラブル防止や、監督機関からの指摘への備えとしても重要な措置です。
まとめ:社員総会は「義務」ではなく「法人を育てる場」
社員総会は、形式的に「やらなければならないもの」と思われがちですが、実は法人の健全な運営や、社員との信頼関係構築にとって欠かせない場です。
事前準備と丁寧な対応によって、社員の参加意識を高め、法人の方向性を皆で共有する貴重な機会となります。
これから社員総会の開催を迎える皆さんも、ぜひこの記事を参考に、安心して進めていただければと思います。
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